社外取締役インタビュー

社外取締役インタビュー

社外取締役への6つの質問

Q1 社外取締役の立場から、大建工業の強み・弱みをどのように見ていますか?

石﨑
国内における顧客基盤は非常に強固なものと思います。また、素材・建材の開発から施工・工事までの一貫体制は、大建工業のブランド力から考えても十分可能であるし、大きな強みと言えると思います。しかし、研究開発は、もっと顧客に近いところでのニーズに対応した方がいいのではないかと思います。また、製品展開力においては、もっとサプライチェーンを整備し、DX化によるITの力を利用して戦略に活かしてほしいと考えます。
浅見
大建工業の強みとしては「高い技術力」と「良い人材に恵まれていること」の2点が挙げられます。特に技術力に関していえば、大建工業の事業・存在そのものがSDGsに資するものになっており、サステナビリティが重要な時代にあって大きな強みといえるでしょう。一方で弱みは、その高い技術力の源となる研究開発力を活かしきれていない点です。適切に経営資源を配分し、新事業への展開や競争力強化につなげる必要があります。
向原
大建工業の強みは「研究開発力」「製品展開力」「顧客基盤」「一貫体制」に集約されていると思いますが、資本業務提携関係にある伊藤忠商事との連携は、これらに厚みを持たせるもう一つの強みと言えます。特に海外強化を目指す上で、伊藤忠商事が持つ北米市場でのネットワークは大きな強みとなっています。弱みは「DXの遅れ」です。DXを加速させるには、人財が不可欠です。中長期的な人財戦略と連動させて強化を図るべく取締役会で議論を深めたいと考えています。

Q2 前中期経営計画「GP25 2nd Stage」の成果と課題をどのように見ていますか?

石﨑
前中計の最大の成果は、国内における事業ポートフォリオの見直しをしつつ、海外への積極投資により事業を拡大したことと、新たな市場を開拓したことだと考えています。しかし、財務基盤の最適化を図りながらも、株式市場の評価は高まったとは言い難く、IRによる投資家との対話という点では、不十分だと思います。新中計スタートを機に、中長期の経営戦略や競争力を伝えるために積極的な対話を進める必要があると考えます。
浅見
課題を2点挙げたいと思います。1点目は国内事業と海外事業の連携・関連性の希薄さです。単なる規模拡大ではなく、国内・海外の各部門間における有機的な関係を構築するための施策を講じること、そして全社的な観点に立ったビジネスモデルの見直しを継続的に行う必要があります。2点目はダイバーシティの遅れです。柔軟な働き方に向けた制度化など、取り組む姿勢は見られますが、新中計スタートを機に抜本的な取り組みを進める必要があります。
向原
売上高を除く経営目標が達成できましたが、特に米国の木材製品の価格が高水準で推移した市況要因によるところが大きいと思います。その一方で、国内に目を向けると急激な原材料価格の上昇に対して売価転嫁の浸透が後追いになったこと、また、最終年度には、製販の連携・国内外の連携に支障が生じたこと等により、収益的には厳しい状況となりました。経済環境の大きな変化への「機敏な対応力」に課題を残したのではないかと感じています。

Q3 新中期経営計画「GP25 3rd Stage」の策定にあたり、こだわりを持って議論された点をお聞かせください。

石﨑
「建築資材の総合企業」としての姿の確立を掲げていますが、姿ではなく実体として確立する必要があります。SDGsによる社会課題解決の追求をベースとしている点は評価できますが、企業理念の中にもう少しパーパス(企業としての存在意義)を意識し、働く人たちの理性や感情を活気づけるものにした方がいいかと思います。また、そのための事業戦略を、グローバル視点、テクノロジー視点から具体的に述べた方がいいと考えます。
浅見
特に重視するポイントは、①研究開発、新技術による新素材の展開、②事業を通じたSDGsへの貢献、③海外事業の展開、④人材のダイバーシティ促進、⑤DXの推進の5点です。これらのポイントが方針等に織り込まれましたが、新中計を推進していく中で、実効性のある施策がなされているか、また適切に経営資源が配分されているか、注視していく必要があると考えています。
向原
「成長戦略」「ESG」を中心とした議論ができたと思います。ただ当初の議論では地政学的リスクの顕在化など急激な経済環境の変化を前提としたものではなく、成長戦略も今までの路線を踏襲するものでした。この点は新中計の発表を遅らせ、再度議論することで対応しましたが、今後も世の中が劇的に変化することもあり得る中で、リスク要因をより広範に想定した取締役会での議論が必要だと思います。

Q4 新中期経営計画「GP25 3rd Stage」の達成に向けて、自身の果たすべき役割をどのように捉えていますか?

石﨑
大建工業の成長戦略においてグローバル展開、M&Aが不可欠となります。投資銀行業務等で培った専門知見を活かし、適正な買収価格の算定、各種リスク要因の把握、買収後のPMIの実施などにも積極的に関与していきたいと考えています。
浅見
新年度から特に果たすべき役割としてこだわりたい点は、現場の声を聴き取ることです。コロナ禍の制約もあり、十分な取り組みが行えませんでしたが、特に中間管理職、工場や研究開発、女性などからの取締役会の会議室では聞こえてこないリアルな声に耳を傾け、大建工業の活性化につなげたいと考えています。
向原
先に述べた弱みの「DXの遅れ」にも関連しますが、「人財戦略の高度化」「経営層のサクセッションプランの議論の深化・作成」を早急に進める必要があると考えています。これまでの経営経験を活かし、これらの具体化に向けて貢献したいと思います。

Q5 スキルマトリックスの開示及び新取締役2名の就任にあたり、「ガバナンス委員会」の委員としてどのような点を重視して選定にあたられましたか?

石﨑
新中計を具現化するために必要なスキルとして、国内の全体統括に加え、グローバル化とM&A戦略、DX化戦略を融合させ、企業価値増大に貢献できる人材という点を重視して選定にあたりました。社外取締役は、候補者のこれまでのすべてのキャリアをみて評価できないという難しさはありますが、幹部職との面談を重ねて把握に努めるとともに、公正さや客観性、透明性を確保することも重視しました。
浅見
取締役会の多様性という点では、引き続き課題が残る状況にあります。今回の新体制で世代交代を進めましたが、新体制での取締役会の経営戦略水準が大きく改善しているとは言えないでしょう。ガバナンス委員会などで議論する中でも後継者育成の難しさを改めて実感しています。現経営陣は今の体制に安穏とするのではなく、次世代体制に目を配り続ける必要があると思います。
向原
サクセッションプランの議論を深めるには、全社の人財戦略の高度化と連動させる必要があります。その点で議論不足と言わざるを得ません。スキルマトリックスについては、2021年11月に第一歩として作成・開示しましたが、これで完成とは言えない状況だと思います。人財戦略と連動させてガバナンス委員会や取締役会で議論を深め、早急にレベルアップさせる必要があると考えています。

Q6 社外取締役として長期の企業経営のあり方についてどのような点を重視し、取締役会での議論を深めたいと考えていますか?

石﨑
さらによい企業とするために、企業の目指す方向性や各ステークホルダーのニーズへの適応等を取締役会で十分に議論すべきだと考えます。従来の「卓越したグローバル企業」ではなく、それを超えた企業を目指すこと、単なる利益の追求ではなく、企業が社会に与えるすべての価値を最適化することが重要になります。このような目標を実現することはチャレンジですが、そのチャレンジを取締役会で議論し、リスクテイクと財務基盤の最適化を図ることにより、SDGsを推進する大きな変革を起こすことができるのではないかと考えています。
浅見
①人材のダイバーシティ、②研究開発、③経営資源配分の3点です。①大建工業の強みである技術力を持続可能なものとするには、それを支える人材もリスクに耐え得るよう、多様性を確保する必要があります。②長期視点の収益源泉・価値創造のため“サステナビリティ素材”の展開が不可欠です。現在の研究開発テーマにも可能性を秘めたものが数多くありますが、事業化を加速させるためには、経営資源投入が必要です。③技術力をベースに海外展開する連携・シナジーがなければ、長期にわたる収益・価値創造の源泉になり得ません。その点を踏まえた事業ポートフォリオ・経営資源配分のあり方について議論を深めたいと考えています。
向原
今、世界は歴史的転換点にあるのではないかと言われています。まず前提として従来の延長線ではない、中長期的な将来の経済社会を意識した思考で議論していきたいと考えています。その上で重要テーマは、①抜本的な事業改革につながる真の意味でのDXの推進、②人財戦略の強化、③今後ますます重要度が高まり、大建工業にとって大きな強みになる可能性を秘めたグローバルな視点の高度化、の3点です。特に②人財戦略に関しては、「投資」「育成」などの観点で強化が必要です。企業にとって最も大切なものはやはり「人」だと思います。