社長 × 社外取締役 座談会
「持続的な企業価値向上に向けたガバナンスのあり方について」

社長 × 社外取締役 座談会

2020年6月26日の定時株主総会後、社外取締役3名の新体制がスタートしました。これを機に、社外取締役3名と、 代表取締役 社長執行役員の億田正則が、持続的な企業価値向上に向けたガバナンスのあり方をテーマに、テレビ会議 システムを用いた座談会を行いました。

億田
6月26日の定時株主総会後の新体制として、社外取締役を1名増員した3名体制がスタートしました。
コロナ禍で不確実性の高い経営環境ではありますが、大建工業グループの今後の「持続的な企業価値向上に向けたガバナンスのあり方」について、社外取締役の皆様が、当社に対して率直に感じておられるところをお聞かせいただきながら、意見交換をしたいと考えています。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。

1.取締役会の運営・実効性評価について

億田
まず、2015年から、社外取締役として当社を見てこられ、コーポレートガバナンス委員会、指名・報酬委員会の委員長も務めていただいている水野取締役からお伺いしたいと思います。
水野
私が就任した当時の取締役会は、どちらかといえば受け身の雰囲気が強かったと思いますが、億田社長体制の下、より活発な意見が交わされるようになりました。スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードが制定され、ガバナンスに対する機運が高まった時期と重なったこともあり、コードへの対応とともに取締役会が活性化したという印象です。2015年度末から開始した取締役会実効性評価においても単なる点数評価ではなく、自由記述欄に多数の意見が寄せられ、毎年様々な角度からの課題抽出と改善に向けた取り組みにつなげることができています。これら活発に出された意見をベースに年々改善が進んでいる“開かれた取締役会”であるところが、大建工業のガバナンスの特長といえるのではないかと思います。
一方で課題を挙げるとすると、コロナ禍の不確実性への対応も含めたリスクマネジメントではないかと思います。M&Aを進める中でグループ会社も増えていることから、グループベースのリスクマネジメントについて、取締役会での関与を強める必要があると考えています。
古部
グローバル化を進める中、特に海外のリスクマネジメント強化が必要だと思います。
石﨑
取締役会における活発な意見や、実効性評価で課題を抽出しながら、年々改善している点については評価できると思いますが、1年間みてきた監査役の立場でいえば、取締役会の議論の深さという点ではもう少し踏み込む必要性を感じています。
億田
取締役会実効性評価を通じた改善対応について、社外取締役の皆様からも一定の評価をいただいていますが、議論の深さという点については課題が残る状況かと思います。今後は、海外も含めたグループベースのリスクマネジメントのあり方など、中長期の競争力や企業価値を左右する重要テーマを選定し、時間をかけて議論する機会を設定していきたいと思います。
億田正則

2.今後の成長に向けた事業展開について

億田
次に、今後の成長に向けた事業展開や研究開発について、意見を伺いたいと思います。住宅設備メーカーの経営者としての経験等も踏まえて、まず、古部取締役が感じておられるところをお聞かせください。
古部
私は2017年に社外取締役に就任しました。大建工業の時間軸でいえば、前中期経営計画の後半2年間と、現中期経営計画の1年目、まさにシフトチェンジの時期に当たります。
この間、海外での素材事業拡大に向けたニュージーランドMDF工場や北米木質素材事業の買収でグローバル化の足場固めを進めるとともに、国内では公共・商業建築分野での拡大に向けた製品ラインアップ拡充など、新設住宅着工戸数が減少するというリスクシナリオに対する危機感を全社で共有し、能動的なアクションを起こせていることは評価できると思っています。また、既存の収益基盤である新築住宅市場においても、ターゲットを絞って差別化製品の提案を強化することで、効果的にシェアアップが図れている点も一つの成果だと考えています。
億田
中期経営計画の基本方針として、事業ポートフォリオの見直しを掲げています。コロナ禍により、当初の想定よりも時間軸を早める必要性が高まっています。その中で、役割を終えた事業と今後も強化していく事業を見極める選択と集中の判断も必要になってくると考えています。
古部
成長戦略の一つである海外市場の拡大には人財育成の強化が不可欠です。一朝一夕にできるものではありませんが、マイルストーンを明確にして着実にレベルアップを図っていく必要があると思います。
億田
2019年度の海外売上比率が、前年度の11%から18%に高まりました。人財面での対応は急務です。これまでも各種研修メニューの充実や、ジョブローテーションによる育成を進めてきましたが、資本業務提携先である伊藤忠商事(株)との人事交流も含め、底上げを図っていきたいと考えています。
古部
将来の成長に向けて、大建工業らしい新たな事業展開や研究開発も強化していく必要があります。リーマンショック前の2000年代前半から選択と集中による事業構造改革を進め、その過程でいくつかの事業撤退もしてきたと思いますが、それらをやめる決断ができたのは、次の柱になる事業があったからではないでしょうか。今後も事業の新陳代謝を高めるためには、次々と新しいものを生み出す土壌を大事にしていく必要があると思います。そういう点で、2018年に開設したR&Dセンターを起点とする研究開発強化はいい流れになっていると感じています。オープンイノベーションのコンセプトの下、情報のネットワークも広がっています。今後の課題は、R&Dセンターで生み出したシーズをどう世の中のニーズと結びつけるかだと思います。
億田
新たな事業展開としては、素材、建材、エンジニアリングに次ぐ第4の柱となる次世代の事業を見出すべく検討を進めていますが、現在手掛けている建築資材という範疇から大きく異なる領域での事業は難しい面があることから、まず隣接する領域から検討を進めているところです。
その中で、R&Dセンター発の技術も着実に具体的なかたちとして現れ始めています。事業化にはある程度の時間を要すると思いますが、中長期の企業価値向上に向けた取り組みとして、積極的に経営資源を投入していきたいと考えています。
水野浩児
水野
R&Dセンターでオープンイノベーションを積極的に進めているところですが、中でも産学連携の研究開発はこれまで以上に取り組みを強化してほしいと考えています。
当社にない発想やノウハウを取り入れることで、新しいものを生み出す原動力になると思います。短期の視点ではなく、中長期視点でしっかりと育成するスタンスで“技術の大建”の地位を確固たるものにしていく必要があると思います。
億田
産学連携という点では、大学との共同研究や若手の研究員を大学に派遣するなどの動きを進めています。異なる世界を経験することで新しい発想が生まれる可能性が広がるので、今後も継続的に取り組んでいきたいと思います。

3.成長戦略のためのM&Aのあり方について

億田
今後の成長に向けた新たな事業展開という点では、その手段として当社ではM&Aを活用しています。石﨑取締役は投資銀行業務の経験が豊富で、特にM&Aに関する知見をお持ちかと思います。そういう観点で、今後のM&Aのあり方について、ご意見があればお聞かせください。
石﨑
企業価値を高めるためには、M&Aは不可欠な手段だと考えています。私の経験上、M&Aを実行する際には、取締役会において、当社の経営戦略との整合性や事業計画の妥当性などについて、さらに議論を深め、企業価値を最大化するために本当に適切な案件なのかの検証を行うことが重要であると考えています。
また、買収後の対応として、子会社のリスクマネジメント、リスクコントロールは強化する必要があると感じています。この点については、取締役会でもう一段深掘りした議論が必要ではないでしょうか。
その際に基本となるのが、有事に本社に正確かつタイムリーに情報が入る仕組みの構築です。大建工業では、BCPやコンプライアンスの観点から報告ルールや内部通報制度を整備していますが、対象となるグループ会社が増える中で、遅れや漏れがないか、仕組みが有効に機能しているかといった検証も必要だと思います。
古部清
古部
ネットが社会に浸透する中、グループ会社を含めた全社の情報が、本社にタイムリーに入ることは大変重要です。ITをうまく活用し、より効率的に情報が集まる仕組みを構築していく必要があるのではないでしょうか。
水野
M&Aは大建工業の成長戦略にとって引き続き重要な手段であり、取締役会実効性評価を踏まえた今年度の重点課題の一つとして買収案件に対するモニタリング強化をテーマアップしています。
これまで事業報告という形で実施してきたものから、もう一歩踏み込んで、当初目指した効果・シナジーとのギャップやリスクマネジメントの視点なども含めて継続的にフォローしていく仕組みを構築していく必要性を感じています。
億田
M&Aに関しては、長期ビジョン、中期経営計画で注力市場として位置付ける3つの市場を強化するために取り組んできました。特に2019年度は、海外市場拡大に向けた北米木質素材事業、公共・商業建築分野の提案商材拡充のための無垢床材事業、住宅リフォーム市場における工事力強化のための首都圏のリフォーム事業の3つの案件を手掛けました。
当社の経営戦略との整合性や事業計画の妥当性などについてさらに議論を深めるとともに、効果・シナジーの検証やリスクマネジメントの視点を盛り込んだ買収後のモニタリングの仕組みを構築し、取締役会としての重要案件への関与のあり方を明確にしたいと思います。

4.企業価値向上に向けた株主・投資家との対話の充実

石﨑
ガバナンスについて、もう一つ申し上げたいのですが、ガバナンスには社内的に管理するインナーガバナンスと外部からの客観的な視点でチェックを受けるアウターガバナンスの両面があり、これらを両輪でバランスよく機能させる必要があります。大建工業の場合、前者は概ね機能していると思われますが、後者はもう少しレベルアップが必要ではないかと感じています。そういう点でアウターガバナンスの軸になる株主・投資家との対話、すなわちIR強化が不可欠だと考えています。現状の活動をみると、国内での対応にとどまっています。海外の投資家にも積極的にアプローチして対話を充実させる必要があると思います。
石﨑信吾
古部
私は前職で海外投資家とのミーティングを定期的に実施していました。国内の投資家とは違った視点のディスカッションができること、また、大建工業の特長であるESGに対する評価を重視する投資家も多いため、対話のフィールドを広げることで今後の企業価値向上につながると思います。
水野
IR強化の必要性は、私も感じているところです。不確実性が高まる中で、当社の考え方や方向性をより理解してもらうためにも、特に経営トップによる直接対話の機会を増やしていくべきではないかと思います。
億田
IRについては引き続き強化していきたいと考えており、そういう観点から、2020年度の新たな組織体制として経営企画部門内にIR専任部署を設けました。また、私自身の経営トップとしての責任を明確にするとともに、IR担当役員を中心とした一貫性、継続性のある取り組みとして強化が図れるよう、コーポレートガバナンス委員会や取締役会での議論を経て、「株主との建設的な対話を促進するための体制整備・取り組みに関する方針」を改定しました。
IR活動を通じて、当社の強みや目指す方向性をしっかりと伝えるとともに、株主・投資家からの示唆に富む意見に耳を傾け、企業価値向上に向けた対話の好循環を生み出していきたいと考えています。

まとめ

億田
これまではある意味で平時の取締役会でしたが、今後はコロナ禍による不確実性の中、有事の取締役会としての役割を果たしていく必要があり、これまで以上に経営の舵取りを担うことに対し重責を感じています。
重要課題としっかりと向き合い、社外取締役の皆様の専門的かつ客観的な知見を交えて議論を深め、持続的な企業価値向上を図るための方向性を示していきたいと考えています。
本日はどうもありがとうございました。