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“山を活かす”を目標にしたオロチの地域創生 ~株式会社オロチインタビュー~ 後編 2018.07.30 くらしの声 “山を活かす”を目標にしたオロチの地域創生
~株式会社オロチインタビュー~ 後編

株式会社オロチは「単板積層材」を作っている。単板積層材とは、丸太をかつら剥きのように薄い板(単板)にして、乾燥裁断して張り合わせて作った材。構造材や造作材として使われて、「LVL(Laminated Veneer Lumber)」と呼ばれ、集成材などと共に「エンジニアリングウッド」と総称されている。LVLでは国内有数のメーカーとなったオロチ――「なぜ、いまの時代に林業なのか?」――森英樹社長に、林業の在り方について訊いた。

CHAPTER:01 木を余すところなく使い切るための「木材総合カスケード利用」

手掛けたLVLを持つ森 英樹社長手掛けたLVLを持つ森 英樹社長

エンジニアリングウッドの1つであるLVLは、実際にはどのように作られるものなのでしょうか。

森社長:その前に、まず木材の品質レベルについてお話しましょう。丸太には通称ですが、A材~D材という品質上のランク付けがあります。

A材はすらっと真っすぐな木で、きちんと製材できるものです。B材は少し曲がっているのでかつら剥きにして、合板やLVLにします。C材はチップにして紙にするような素材です。そして、D材は燃料にしかならないものです。

樹木はほとんどが山の斜面に生えますので、大きくなる間に曲がるのが摂理です。すらっとしたいいA材にするには手入れが不可欠となり、非常に手間がかかります。たとえば、手入れしている山から1万本を伐採・選別して、ランク付けすると、2000本くらいがA材、6000本くらいがB材、そして残り2000本がC材とD材といった割合になります。これが、植えてからほとんど手入れしてない山なら、一山からの木全部がB材以下ということもあります。

現在の日本の森林管理の状況では、手入れをする人が少ないわけですから、どんどんB材以下のものが増えていくのでは?

森社長:そのとおりです。なので、B材を主体にして、木をかつら剥きにしてミルフィーユのように重ねて、単板を糊で張り合わせて強度を備えたのが、エンジニアリングウッドである「LVL」です。これにより、普通の木材より1.5倍ほど強度が増します。一枚一枚単板の情報を調べ、強度を測ってコントロールしています。住宅を建てる際の「構造計算」の基準に合わせて作っており、この数字が設計のときに役立ちます。今まで製材品は大工さんの「経験値」で保たれてきましたが、数値で標準化できるようになりました。

さらに、「木材総合カスケード利用」として、資源を無駄にしない仕組みを推進しています。

  • 第二工場にある長さ10m以上にもなるLVL木材
  • 桂剥きにされた単板を一枚一枚観ていく森社長

    桂剥きにされた単板を一枚一枚観ていく森社長
    (写真上)

    第二工場にある長さ10m以上にもなるLVL木材
    (写真左)

それは、どういった方法でしょうか。

森社長:「木材総合カスケード利用」とは、まず木材で、建材(LVL)をつくります。その時、端材や不要部分が出ますので、繊維ボードや紙を作るための木材繊維やチップをつくります。さらに、最終段階まで残ったものは燃料としてエネルギー利用します。これを自社工場のなかで段階に利用して、貴重な木材資源を、無駄なく効率的に利用します。

つまり、伐採した樹木をあますことなく使い切ることができて、それを山全体にも及ばせる……と。

森社長:それが理想ですね。
山の手入れが十分なされていない状態ですから、A材が少なくなるのは、今となっては仕方がありません。でも、大勢を占めるB材まで木材として利用しないのはおかしい。LVLならB材も十分使えて、資源の有効活用に最適です。つまり、一本ずつをカスケード利用していければ、山全体をカスケード利用できると思います。

CHAPTER:02 林業の将来性を考えて、あらたな挑戦を!

温められた杉などの樹木が加工されていく温められた杉などの樹木が加工されていく

前回、杉という樹木の特性として「暴れる(反ったり、歪んだりする)素材」とのことで、これを現代の住宅ですぐに使うのが難しいということでしたが、LVLはどのように、この杉を利用したのでしょうか。

森社長:いま日本で一番植林されているのが杉です。山林の6割近くは杉が植えられています。ですからなんとかして杉を活用しなければならないという使命がありました。 でも、杉は生えている場所により性質がかわり、さらに品種によっても特性に違いがあります。エンジニアリングウッド化していくうえで、とにかく扱いが難しいので、やり始めてから本当に苦労しました(笑)。LVLに加工してからも、「暴れる(反ったり、歪んだりする)」個性がでてしまいます。

このあたりの杉の特性をどのように抑え込むかについては、企業秘密のところもあるのですが(笑)、丸太を温めて、かつら剥きしやすくしたり、強度をある程度残しながら、かつら剥きする方法を追求したりして、外国からの木材に負けない材料になるようにしました。

年々、段階ごとにできることをいろいろ試して、以前は丸太全体の4割ほどしか使われていませんでしたが、今は6割以上使えるようになり、結果として、山にたくさんのお金を戻せるようになりました。

「山にお金を戻す」……素晴らしい考えです。

森社長:そのための技術だと思います。たとえば、JAS(日本農林規格)基準で強度の強い材料(80E以上)を作ろうとすると、LVLの外側に強度のある材を貼ると強度が出てきます。さらに強い強度(120E)になると、通常は唐松などでしか作れないのですが、杉と檜のハイブリッド(混合)、あるいは杉と唐松のハイブリッドなど、強度の強い他の材と混ぜて杉を活かす技術開発を考えています。

これまで住宅にしか使われなかった杉に、ある一定程度の強度を持たすことができれば、公共施設、店舗、福祉施設などへの利用も可能です。いわば、LVLの技術により、杉の最大のポテンシャルを引き出すことが可能になるわけです。杉の働き場所をしっかりと示せれば、木の温かみを感じとれて、木の香りとともに和みの空間ができるはずですから。木材としての肌触りや香り、吸湿性などいいところは残しています。

杉という自然のものをつかって、強度を持った新たな建築材を作っているイメージですね。

森社長:はい。杉を出荷するというより、建築基準に合った建築材料としての木材を出荷しています。

とくに日本は大きな震災を経験していますので、耐震への関心が非常に大きいんです。住宅建材メーカーさんはすべて強度係数をチェックして使用されていますし、最近は認定を取らないと住宅関連の補助金を受けられなかったり、強度等級が低いと中古住宅として売るときに査定価格が下がったりします。つまり、強度を備えることは、必須の時代なんですね。

我々の取り組みを、住宅メーカーさんや工務店さんに紹介させていただくと、みなさん納得していただけます。東京にある住宅会社からは、モデルハウスの店長さんたちがわざわざ丸太伐採の現場や加工の様子を見学しに来られます。素材の理解ができ、柱や壁がどうやってできているのかという物語を知ると、エンドユーザーであるお施主さんにもわかりやすく伝えることができて、一気に受注につながるケースが多いようです。お施主さんも、少し踏み込んだ生態学的な話や自然環境、土地や地域に関わる話を聞けて、とても楽しんでくださるようです。

  • 大型木造建築物の場合はスチールバーで一部補強大型木造建築物の場合はスチールバーで一部補強
  • こちらは木材だけで、これだけ大きな屋根を支えているこちらは木材だけで、これだけ大きな屋根を支えている

オロチさんの取り組みは、日本の山林を活用していくひとつのモデルケースになるように思います。

森社長:木の市場を開拓していくのは、新しい価値を創造していく、非常に夢がある仕事です。自然環境や災害防止に配慮しながら森林の維持管理をし、木材を伐採して搬出、そして、製材品、集成材、合板等として活用する。そして、また植林をしていくことは、CO2の吸収源としても有効で、社会的にも意義深いと感じています。

ただ、日本全体で、山の木をどうやって出荷していくのか、流通の面でも整備が必要です。たとえば、日南町で会社を始めた当時、年間約3万m3の出荷でした。今は10万m3になっていて、ここからさらに5割増はできると思うのですが、山村地域に人は少なく、高齢者や女性を含めて雇用することにしていますが、その5割を増やすためには「誰が伐るの?」「誰が加工するの?」「誰が運ぶの?」という状態になっています。もちろん、工場の合理化や機械化、あるいはAIの導入も必要となってきます。

10年目になって70名の雇用を創出しましたが、現実には労働力不足が問題になっています。企業および環境のサステイナビリティ(持続性)を充実させるためには、やはり人の問題が大きいのです。今70名が三交代で勤務しています。農業が主産業の山村にとって「夜は休む」もので、働くという発想はなかったので、三交代制勤務をなかなか受け入れてもらえませんでしたから、これもひとつの課題ですね。

最後に、今後の日本の林業はどうなるとお考えですか。

森社長:国内の住宅建築だけを考えれば、マーケットは小さくなるでしょう。しかし、木を使う分野や地域を変えることで、マーケットが小さくなってもシェアは伸びると思います。

実は木材のシェアは、木材同士ではなく、異素材との戦いでもあります。たとえば木材は、鉄筋コンクリート造の家に勝たないといけません。震災で「木造の家がつぶれた・燃えた」と聞くと、みんな鉄筋の家を建てようとします。木造の家に住みたくても、価格が折り合わなくて難しいという人もいます。ですから、「不燃」「耐震」という付加価値をつけることが必要になってくると考えています。あるいは、出荷するLVL製品にもう一手間かけることで、現場の工務店や大工さんの手間を減らす商品にして、工期の短縮に寄与することもできるでしょう。また、紙の合板や強化繊維とのラミネート加工など、未来志向で付加価値をつけることを構想しています。

どんどん木の可能性は広がりそうです。

森社長:はい、今、日本の山は先輩の尽力で非常に充実してきています。私は、山にもう一度循環を作りたい。伐ったらまた植えて、そしてそこから利潤が生まれるようにする。社会的意義を考えて、知恵を絞って「山を動かし、地域を動かしたい」ですね。

ありがとうございました。地場産業として、ますますの発展を願っています。